賀川浩

キックオフ後、15秒で生まれたゴールに観衆は唖然とし、やがてどよめいた。 ロンドンからの長い旅の後の第1戦、普通なら相手の出方をうかがい、しばらくは、さぐり合いの時間が続くハズだったが、アーセナルはそうではなかった。 日本のキックオフで始まり、釜本から八重樫、そして後方の小城へボールが戻されたとき、10番のゴールドが飛び込むように奪い、その勢いで彼は一気にペナルティエリアまで突進した。その速さに驚く私たちの目には鎌田がタックルするのが映る。だが、いったん潰しながら、ボールを蹴り出せないうちに、ゴールドが取り返した。右後方からフォローするラドフォードにバックパスをして、彼は右へ開く。すると、そこへラドフォードから短いリターンパスが送られた。 ゴール前20メートル、ゴールドのシュートは”矢のように”という形容そのまま一本の線となってゴール右に突き刺さった。 さすがはアーセナル、音に聞くイングランドのサッカーはこれか―――。 たのもしかったのは一発食った日本代表が臆することなく攻め返したこと。スタンドの十数本の日の丸と、選手を励ます喚声が力づけたのかもしれないし、あるいは、正直なところ、あまりの早い失点に驚いたり、気遅れしている間もなかったのかもしれない。 スタンドの喚声が最高潮となったのは、8分に渡辺からの速いクロスが右からゴール前へ飛んだとき。釜本が相手2人のDFと同時にジャンプした一瞬の後、ボールはネットに入っていた。